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オタ芸の形骸化

*サムライナンバーナイン 『7つのQを放つ夜光劇場は存在するか?』 サンモールスタジオ
(2009.3.16)

たとえば「アキバ」的と称されるような「オタク」のざっくりとしたイメージは、ここ数年、地上波のテレビを中心として、表層的に(また揶揄的に)、それはもううんざりするくらいに提示され続けています。「アキバ」的なものへの理解や共振ではなく、遠巻きに「オタク」をからかう意図の滲み出たそれらの中にはしかし、オタクたちの過剰な自意識を端的に批評するような模写も確かに存在したと思います。

とはいえ、それも繰り返されれば容易に「模写の模写」になってしまうし(今日ビートたけしやアントニオ猪木の物真似がおしなべて「彼らを真似した誰か、を真似する」ものになっているように)、それが続けば当初見えていた批評性からも遠ざかって、後味が悪く、かつステレオタイプな「オタク」への悪口だけが残ってしまう。そのことへの無自覚は、現在もなお継続しているといえるでしょう。


本公演でもっともひっかかったのは、そういうきわめて表層的な「アキバ」解釈が色濃くあらわれてしまっていることでした。テレビ的なネタとしてももはや新鮮とはいい難い「オタク」解釈を後追いでなぞるような表出を、小劇場系の劇団が屈託なく上演してしまうのは非常に残念な感じがします。

象徴的にそれがあらわれるのは、地下系っぽいアイドルのアヤとそのファンたちとのかかわりのシーン。ファンたちの「オタ芸」にせよ、「ツンデレ」という今更なワードの使用にせよ、それらに対する批評や再解釈が明示されるでもなく、消費され尽くした表層的なイメージをトレースしているような場面が続きます。「ウッーウッーウマウマ」とか「ググレカス」(これはオタク的なものではないような気がする)とかの引用も同様、「オタクってなんかこういうのでしょ」という、雑なイメージ付けが見えてしまう。ひょっとしたらアイドルヲタとアニメヲタと、あとネットの掲示板に書き込む人たちのそれぞれを区別すらしていないかもしれない。全体的に、「オタク」を模写したコントか何かを、さらに単純化して模写し直したようなものになってしまっていました。「オタク」への批評としてやっているなら有効なものでは到底ないし、そうではなくテレビ等で見たオタ芸などを無邪気に面白がってやっているだけならもっと傷は深い、かと。


ストーリーの本筋とは別に、上述のようなオタクものや小コントが挟み込まれていて、企図としては場面場面に勢いを与える機能を担わせています。


同窓会のためかつてのクラスメイトが営む喫茶に集まったはずの男たちが、いつの間にか警察・自衛隊に包囲され、喫茶だと思い込んでいた場所は首相官邸、彼らは首相官邸に立て籠もったことになっていた。実は彼らはかつて「革命」を目指した自衛隊幹部の部下たち。彼らに革命を託した上官により、記憶障害の出る薬品で記憶・行動操作され、特定の期日に首相官邸に乗り込み占拠するよう誘導されていて、彼らは次第に革命の志士としての記憶を取り戻し…。

という、書き出してみるとなんだか疑問点が複数出てきそうなメインストーリーも、ストーリー上どういう位相の話なのかがよく見えない上述のオタクコントも、生の舞台という環境では、本来勢いで説得してしまえるはず。その力業が可能になるのが、映画等とは異なる舞台演劇の利点でもあるでしょう。

ただ、その勢いを成立させようとすれば、今度は役者個々人のパフォーマンスの如何が問題になるわけですね。演技に関していうと、男性キャストの幾人かにバタついている感があって、ちょっと入っていきづらかった。演技力というのはコントにも同様に必須な条件なわけで、笑いを丁寧につくるうえで、このバタつきは多少問題がありました。


コントの方向性やボケのあり方自体も、パターン的な反復が多く、ありがち感は否めない(それならなおさらカギは演技力ですね)。それから、警視正役の俳優が多用していた「出てこいや」という高田延彦の物真似(の物真似)も、テレビで幾度も繰り返されてきたものではあります。「オタク」への解釈同様、流布しすぎたステレオタイプに対する批評眼や再解釈(そうでなければステレオタイプを自然に織り込める演技力)がほしいところです。


コント的なパートをシリアスなテーマ性に織り込むという劇全体の意図は、うまくいけば見応えのあるものにはなるはずです。少なくとも、そういう劇作の方向性は伝わるものになっています。ただし、それを成功させるために超えるべき、丁寧な「笑い」の創作と、「今」的なものに対する批評性(「アキバ」が「今」的、というのはもういい加減違うかもしれないけれど)という二つのハードルは、けっこう高いものかもしれません。
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