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舞台の新人、ライブのプロ

*『血は立ったまま眠っている』 シアターコクーン (2010.1.21)


1960年代を体感しえない世代、環境の人間にとって、寺山修司のインパクトを把握することは簡単なことではありません。いわゆる「新劇」が日本の近代演劇のメインであった時代背景を抜きにして当時の寺山が放った特異性は掴めないし、まして題材として60年安保と分かち難いこの戯曲は、なにより初演された時期(1960年)に具現されることにこそ意味があったものでしょう。
2010年に上演される『血は~』は、同時代的でない、ある程度「歴史」になりつつある「政治の季節」を、現在いかに提示しうるのか、という側面も持ちます。


ともすればアナクロに、あるいは実感と乖離して響いてしまいかねない1960年の革命家ワナビーのセリフ群が浮いてしまわなかったのは、まずは灰男を演じた窪塚洋介の手柄でしょう。
映像媒体での彼の最大の魅力は過剰なほどの独特の臭気ですが、その強い臭気がまた時にクドくなり、彼を一本調子に見せてしまうこともあります。そうした彼のキャラクターは舞台演劇という、「過剰」が許容される場ではちょうどよいおさまりを見せているように思われました。
加えて、しばしば過去の言動が引用され嘲笑のタネにもされる彼の青臭いイメージ(あくまで流布してしまったイメージでしかないのでしょうが)は、灰男の能書きが必然的に持ってしまう青臭さとよくマッチしていて相乗効果を生んでいます。灰男というキャラクターを立たせるのに成功したことで、作品全体に感じる「頼りがい」のようなものは確実に増しています。

もちろん初めての舞台ゆえ、「巧さ」というのとは違うと思うし、まだ演技の方向を探っているようにも見えましたが、クセもキャリアも豊富なキャスト陣にあって、初舞台で存在感が希薄にならなかったことは評価されるべきかと。コクーンという劇場は、映像媒体の人気俳優を舞台に上げる、ということをしばしばやります。その中で近年、妻夫木聡(『キル』)や瑛太(『牡丹燈籠』、『東京月光魔曲』)などの存在感の薄さに接して、舞台キャリアのない人間が主役級を演じることの困難さを感じざるをえませんでした。窪塚洋介の強い臭気はそうした困難を、さしあたって回避することに成功しています。


恋人となる夏美(寺島しのぶ)と初遭遇する場面、


「あの戸口のなかから
 びっくりするようにやさしい女の声がきこえてきたとき、
 それが母の声だと知らずに胸おどらせていたおれだった。
 だがおれには女はいつも隣の室の笑い声でしかなかった。
 おれには
 どうすればいいのか、
 どうすればいいのか、
 どうすればいいのか。
 きみらのガソリンくさく風にはためく疾風のようなシャツの旗にくらべて、
 おれはまるで昨日の空壜みたいにいつもひっそりと
 窓際に立っていたんだ。」

という台詞を、立ちバックでセックスしながら吐くのですが、これが浮かないようにするのはなかなかに難しい。特に「どうすればいいのか」のリフレインがしらじらしい言葉にならずにはまったとき、彼の舞台への適性が強く感じられました。今後の舞台出演継続を強く望みます。


窪塚洋介に並んで特記すべきは、灰男を尊敬し行動を共にする良を演じた森田剛。「革命」にも「頭の良さ」にも憧れながらくすぶる青年役を、小汚く愛らしく見事に務めていたと思います。ジャニーズの人たちは、時折「ジャニーズ臭」みたいなものを消し去って役に化ける姿を見せてくれますが、今回の森田剛も然り。だからジャニーズの舞台がおしなべて良い、ということには勿論なりませんが、あの集団が優秀な役者たちを輩出していることは間違いありません。彼の場合はすでに大きな場での舞台演劇も経験済みではありますが、いずれにしても映像媒体でのイメージが強い人物ではあり、そのような役者たちが舞台で秀逸な存在感を見せたことは今作の大きな収穫です。


映像媒体での、と繰り返してはきましたが、しかし窪塚洋介も森田剛も「ライブ」の素人では全くありません。窪塚は卍LINE名義でのミュージシャン活動で多数のライブをこなしているし、森田は言わずもがな、V6です。それこそ数万人規模の観衆の前には何度も立っている。いずれも眼前の客に対して身体をさらすことにかけてはプロなのです。
先に挙げた妻夫木、瑛太との違いに関しては、そのあたりの環境も要因として小さくないように思います。窪塚、森田がライブのプロとしての強い存在感を提示し、同時に青臭さを表出しうる若手として革命家ワナビーを体現したことで、諸々のいびつさはありながらも総体として魅力的な舞台になったと思います。


あ、あと窪塚洋介の「舌出し」はもう、立派な「見得」になっていますね。ちょっと前にCMでKムタクがやってた舌出しよりずっと可愛いし格好いいよ。
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