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コントは丁寧に

*演劇サムライナンバーナイン『ジェノサイド~ボクとカノジョと春と修羅』 中野テアトルBONBON (2010.4.15)


津山三十人殺しという大ネタを基盤に、終盤それをはるかに凌ぐ超大ネタを重ねた本作。
第二次世界大戦前夜、事実上日本の支配下にある満州。津山事件の犯人が生きて逃走、満州に逃げたとの報。禍々しさとワイドショー性の高さを備えた、キャッチーな題材のチョイス。


シリアスなテーマを軸にしつつ、ギャグでたたみかけてテンポを作るというのがこの劇団のスタイル。そのたたみかけの末に黒い重さを突きつけられればインパクトは大きいはず。そして、それを達成しうるストーリーに仕上がっているように感じました。


とはいえ、「ギャグでたたみかけて」というのはそんなに簡単なことではない。ガチャガチャとギャグを多用することは、一方でストーリー展開をぼやかしてしまうことにもなるからです。昨年のコクーン歌舞伎などにも感じたことなのですが、興味を持続させるためのはずのギャグが、かえって話をいつまでも落ち着かなくさせてしまう。そのため、津山事件という話題が終盤に至るまで、軽い、というか影の薄い存在になってしまっていて、なんとももったいない。話の展開上、津山の犯人と目される登場人物にあからさまな血なまぐささを背負わせることはできないし、舞台は満州であるため直接的に事件を説明する場面はない。けれども劇の根底に津山事件の不吉さをキープしておかないと、終盤の大ネタと有機的に繋がりにくいのじゃないかな、と。

ではギャグの応酬が悪いのか、というとまったくそうではないわけですね。それこそ大人計画とかは恐ろしくハイレベルでギャグと黒さを絡ませているわけで、食い合わせの悪いスタイルではないはず。要は、ギャグパートのシークエンス全体が荒い、ということに尽きると思います。
体を大げさに使うボケであったり、くっきりとしたツッコミであったりが頻出する劇なのですが、発声や掛け合いのタイミングが荒いのでギャグ自体を咀嚼しづらい。そこのまとまりがないので、ストーリーを説明するパートにもすんなり入っていけないのではないでしょうか。逆に言うと、シリアスなストーリーにギャグを詰め込んで、その双方の要素が面白く感じられるようにつくる、というのは団体としてとても高度な技量のいることなのだな。


この劇団の笑いのとり方というのは、率直に言うと若干の古めかしさがあります。エッジのきいた言葉選びやエキセントリックさというのではない。だから面白くないというふうには直結しませんが、そうであるならコントとしての完成度が高くないとなかなか笑えない。雑な勢い先行でオーディエンスを掴めるタイプの笑いではないので、コントとしての演技を丁寧に構築することが課題なのかなあと思います。多羅尾伴内を下敷きにした(キャラはまったく違う)登場人物とかもコントの上ではいいアクセントになるはずなので、あのキャラも作りが荒いのは残念。


あと、昨年のレビューで書いたのですが、ネットで頻出する用語は人間の声として発すると妙な違和感がある(今作では台詞に「どうみても○○です。本当にありがとうございました」が引用されている)。あからさまにメタ視点でネット語を使ってますよ、という目配せがないと、そこもなんだか妙なズレに見えてしまいます(昨日、「twitterドラマ」を見た人もそんな感想言ってたね)。


どちらかといえば、静かな場面の演出にこの劇団の手堅さを感じました。前半、谷口(大野晃紀雄)と静絵(ウチダアキラ)二人きりの会話シーンとか。両氏はそれぞれ、とてもいい役者に見えた。適役だったこともあるんでしょうね。役者陣でいえば、小名木美里さんという方は、もっと普通に色気の出せる人なんじゃなかったかな。いまひとつその良さが見えなかったのは、舞台全体のばたつきのせいかも知れません。


ケレン味のあるキャラ設定も、引きの強いモチーフも、悪くない。ただどうにも演技の雑さ、まとまりのなさが全体のトーンをすっきりしないものにしているような。「津山事件の背景にあったのは実は…」というオチはなかなかに「おいしい」題材なわけですし、終盤のインパクトはわりと良かったと思います。磨かれれば急に完成度が上がることもありうる。現状のこのどうにも抜けきらない荒さが、「原石」感なのかこの劇団の限界なのか、それはまだわかりませんが。
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