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尊重と対抗と

*アイドルユニットサマーフェスティバル2010(2日目) C.C.レモンホール (2010.8.31)


イベントタイトルはアイドルの夏フェスとして銘打たれていますが、8月上旬に催されたTOKYO IDOL FESTIVAL(以下TIF)の多幸感とは幾分趣が異なります。言ってみれば、観る者がより、そこに相互対抗的なアングル(仕掛け)を読み込みやすい場といえましょうか。

2010_8_31_idol_unit_summer_fes._1

すなわち、昨年からの勢いでいつしかトップの座を盤石にしているAKB陣営のグループ・SKE48に、ハロー!プロジェクトの新鋭スマイレージと、昨今の「アイドル戦国時代」のひとつの象徴的グループであるももいろクローバーが対峙する(もう一組の出演グループ・bump.yについては後述)という構図。

AKB陣営×ハロプロ×新興グループ群(×アイドリング!!!)という顔合わせはNHK『MJ』ですでに豪華なかたちで実現していますが、今回はそれぞれのうち旬のグループが一組ずつ参加というスタイルゆえ、シンプルに対抗戦として受け取ることが容易ですし、実際、事前からアイドルファンによるそのような読み込みも少なからず行なわれていました。
AKB-ハロプロという新旧(と表現しておきます、一応)メジャー団体の直接的対峙の機会が少ないこともあり(ということはそれぞれのファンが同一現場に居合わせる機会もまた然り)、こうした場が設けられたときに件のアングルを踏まえて捉えるのはある程度自然なことでもあります。


とはいえ、ももクロを含めここに集った三者を見る際、現帝国に対して旧政権と新興勢力が抗してみせるという姿をそのまま投影するのもいささか違う。スマイレージのメジャーデビュー時には、すでに実質的な覇権はAKB陣営にあったわけで、彼女たちはハロプロ(旧)政権のプライムタイムを知る者ではありません。件のアングルに乗っていうならば、はじめから対抗的位置にいるグループではある。メンバーの福田花音がMC中、他グループに度々言及した対抗意識を垣間見せていたように、「あらかじめ挑戦者」としてのスマイレージがそこにいる。

一方、観客の反応がいちばん大きかったSKE48もまた、AKB陣営を背負う、という立場ではありません。AKB本体の勢い、さらに本体にも参加している松井珠理奈、松井玲奈のアイドルとしての知名度や存在感はやはり大きい。とはいっても、SKE48個体としては「全国区」と言い切れる立場ではないし、彼女たち自身にとってもAKB本体は身近な目標であり憧憬の的であるはず。SKE48をもって、AKB48陣営の代表と捉えるのは少し違う(とはいえ、東京で行なわれたイベントゆえAKBのファンも会場には多かったはずで、そのファンに対してアピールする、という福田花音の姿勢は興味深いものでした)。

また、この「戦国時代」のキープレイヤーであるももいろクローバーはMCにおいて、スマイレージやSKEへの憧れを実に素直に表明していました。もちろんステージの上では他グループを食うつもりで臨んでいるでしょうし、彼女たちの勢いは疑うべくもない。他グループへの憧憬を隠さないというやり方は、あえて自分たちをど真ん中から外し、「旬のカウンター」として自身たちの存在感を示すための戦略であるかもしれません。それでも、アイドル同士が互いを尊重し合う、互いの美点を伝え合うという姿は好もしい。これはアイドルファンの側にも、アイドルの「界」全体を楽しむ、という視点を教えてくれるものなのではないかなとも思います。


アイドルファンはしばしば自身の推す特定のグループのみに傾斜し、アイドルが複数結集する場でも登場するグループによって明らかに観覧者としての姿勢が変わったりします。それ自体、ひとつのまっとうな価値観ですし否定されるべきものではないでしょう。
ただ、現在は「戦国時代」の名のもとにこの「界」全体を楽しむ機運が巡ってきている時期であることも確か。アイドルの群雄割拠、それぞれの立ち位置と持ち味、拮抗関係を愛でるには非常に恵まれた時期ではあります。このとき、ステージ側の人間であるアイドル自身(それも旬で勢いのある)が「界」全体を愛でるような楽しみ方を先導する、その姿を自分は支持します。今回のような企画は、アイドルファンの楽しみ方の選択肢を広げるような視点を、アイドルたちが自ら提供してくれる最良の機会のひとつとなるかもしれません。


そしてまた、ここにbump.yという、土俵をおおきく異にするグループが入っていることも面白い。アイドル「界」という表現を使いましたが、ここまでに言及したことがアイドル界の趨勢すべてではもちろんないわけで。俳優、演技をメインフィールドとするbump.yのメンバーたちは、いわゆる「戦国時代」の中心部にいるわけでもなければ、おそらくはそこに全面的にコミットする意思もない。群雄割拠をよそに、自身たちのスタンスとテンポ感でパフォーマンスするのみ。スマイレージ、SKE、ももクロは立場こそ違え、ひとつの流れの中で統一的に語りやすいグループでした。一組だけ位相が違うようなbump.yが加わることで、アイドルを語りたがる側にまた別種の複雑さを提供してくれるかなと。すでに女優としてメジャーになった人が曲をリリースする、というのともまた違いますし。今回の企画の統一性という意味では難しい立場であったでしょうし、どうしても自然、箸休め的に見られがちですが、こうしたグループが差し挟まれることもまた興味深く思いました。


すでに各所で語られているように、ももクロは『MJ』、TIFに続きトップバッターとしての適性を存分に発揮し、そのポジションを確立しています。スマイレージはやはり曲も充実しているし、他グループに「対抗」する姿勢をあからさまに見せつけました。SKEはAKB本体の勢いも追い風にしつつ、若いファン層を圧倒的に味方につけているように感じられます。それらの拮抗を一覧するのはやはり相当に面白い。せっかくの「戦国時代」、お互いの対抗意識と、それぞれの足場への矜持が見え隠れするさまを見たい。けれどその底流には、ももクロが見せたような、互いを尊重し愛でる姿勢があってほしいし、ファンにとってもその姿勢こそがアイドル「界」、アイドルという事象全体を楽しむうえで不可欠だと思うのです。
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